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パインの葉の繊維でサスティナブルなファッションを世界へ 株式会社フードリボン宇田悦子さん

サスティナビリティな社会の実現に向けて、未利用農産資源の活用を図る、株式会社フードリボン。

次世代の地球のため、そして環境に対する人々の価値観を変容させようと、やんばる大宜味村を拠点にグローバルに動いている。代表の宇田悦子さんに事業の想いと、これまでの歩みを伺う。

 

宇田悦子(うだえつこ)株式会社フードリボン代表取締役社長。

2017年フードリボンを創業。2019年からパイナップルの葉の繊維素材開発をスタートした。捨てられていた資源を生産者に還元できる素材に生まれ変わらせ、消費後は自然に循環できる仕組みを、多彩な協力者と共に構築している。

 

 

【パイナップルの葉を使った繊維開発事業】

フードリボンでは、パイナップルの葉やバナナのといった本来廃棄する部分から繊維を抽出し、新たな商品開発を行うことで、持続可能な社会の創出を目指している。

 

「パインの葉は果実の2倍以上の収量がありますが、これまでは価値の無いものとしてその大半が捨てられていました。

昔からフィリピンでは手作業で繊維を取り出し織った、ピーニャという生地が、王族の衣装素材として使われてたことをヒントに、沖縄のパイナップルの葉の繊維も活用できるのではないかと着目しました。

このような農業資源由来の天然繊維は食べ物を得るために耕された既にある畑から得られることや、天然繊維であれば最終的に自然界に還ることができることから、持続可能な繊維原料としてのポテンシャルがあります。」

 

またフードリボンでは、新たな繊維抽出技術の開発に成功している。この機械を農家に無償で貸し出し、繊維を買い取る仕組みにすることで、協力農家に利益が渡るようにした。

【サスティナブル事業へのきっかけ】

前職は美容業界だったという宇田さん。シークワーサーの果皮から抽出したアロマオイルや、果皮のパウダーを作り活用する取り組みで沖縄を訪れた時の出会いがきっかけでサスティナブル事業への気持ちを後押しさせた。

 

「農作物の有効活用ために、沖縄に足を運びました。そこで出会ったおじいおばあの、自然の恵みに感謝する生活に、大切な価値観があると気付かされたんです」

 

そこで宇田さんは、自身の原点となる、ある言葉を教えてもらう。

 

『かふうあらしみそーれ、とぅくとぅみそーれ』

「かふう」は「果報」で、「とぅくとぅみ」は「徳を積む」という意味です。

自分のことだけでなく、まわりのこと、子供や孫の世代に幸せが訪れるように善い行いをしなさいねという意味で、これまでは自分の周りや目先のことしか考えられていなかったことに気付かされました。人生の貴重な時間を使うなら、子供たちの時代をより良くすることに使いたい。この言葉を心に働こうと決めました」

 

2017年に大宜味村のシークヮーサーの事業利益の一部を世界自然遺産に寄付することからスタートした。

2019年にはパイナップルの葉を活用した天然繊維事業や生分解性材料事業を展開する。

 

作って売っておしまいではない、物の行方を考える

ものは作って売っておしまいではなく、捨てた後まで続いていく。世界は繋がっていて、無関心になったところから環境問題が起きている’という考えから、商品開発だけでなく地域や教育の現場へのアプローチで価値観の変革にも取り組む。

 

「生産から消費後の行方まで追っていくのは一社ではできないことだと考え、協力者とともに天然繊維循環国際協会という団体を立ち上げ、その活動として『服育』と称し、ファッション産業が環境に与えている影響や、着終わった後の洋服の行く末を出前授業でワークショップをしています。

ファッション産業の環境汚染への影響は石油産業に次ぐ2位と言われてます。例えば化学繊維の洗濯時に流れる繊維が海洋マイクロプラスチックの35%の要因になっていると言われていますし、天然繊維にも課題はあります。そういう実情を次世代の消費者である子供たちに伝えてまず少しでも関心を持ってもらうことが大切な一歩だと思います。」

 

人材育成も積極的に行う。大宜味に創るファクトリーに併設する形で、研修施設も構えていく予定だ。

 

「植物から繊維を抽出した糸を使って、最終製品にするまでの過程を実践でき、デザインや縫製など、手に職を付けることができる研修施設を企画していますデザインの時点から循環を考えるような新たなブランドがここから生まれ、可能性を持つ人材が羽ばたいていく場所にしたいと思っています。」

【今後はグローバル展開を進める】

パインの葉やバナナのの天然繊維事業を、今後はグローバル展開させていく。

「今後、パイン・バナナの国内主要産地の沖縄だけでなく、海外の広大な産地からも原料を調達します。まずは台湾やインドネシアと連携をスタートし、さらにほかの東南アジア諸国にこの技術を提供し、農家所得向上に役立てます。ファッション業界をはじめ、インテリアやホテル飲食業界、工業業界でも天然素材が求められています。世界から求められている大きな市場に向け展開し、この事業を社会課題の解決につなげていきます。」

 

沖縄発の技術で、世界の課題を解決に導く。

繊維産業やファッション産業の構造を、100年先の未来のために好転させる。

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