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テクノロジーで手のひらに温度を与え、触覚を再現 大阪ヒートクール

全国の大学から各分野のエキスパートが集まって結成された「大阪ヒートクール」

五感を再現するテクノロジーの中で、とりわけ「触覚」の再現技術の革新を目指すスタートアップだ。

 

触覚は主に、‘圧力’と‘温度’で感覚を再現するのだが、圧力を感じる感触の再現については、すでにスマートフォンのホームボタンなどで商品実装が進んでいた。

しかし、‘温度’感覚の再現に関してはまだ開拓が進んでおらず、この領域のイノベーションに期待が集まる。

 

大学教授など、各分野のエキスパートが集まる「大阪ヒートクール」

 

 

【大阪ヒートクールのコア技術】

役員である吉國聖乃さんは、大阪ヒートクールのコア技術についてこう話す。

 

「温度再現技術では『ペルチェ素子』という板状の半導体熱電素子を用います。このペルチェ素子に電流を流すと、温かい面と冷たい面を作ることができるんです」

 

以前からこの技術は存在しワインセラーなどで実装されていたのだが、リチウムイオン電池の進歩で小型化が図られ、ウェアラブルデバイスとして成立するようになった。

 

「素材や伝送技術などのエキスパートで共同創業しているので、素材の開発から回路の設計、3Dプリンターでの造形作成まで、ワンストップで取り組めるのも弊社の強みです。15℃~45℃の複数温度を提示でき、その温度変化に必要な時間は、わずか1秒ほどです。この技術によって、ユーザーに対して瞬時に、温度を起点とした触覚再現の体験を与えることが可能になります」

 

【もたらされる社会イノベーション】

この技術は、以下の分野での応用に期待ができる。

 

①HEALTH Tech(健康医療分野)

20℃ほどの冷たさと40℃ほどの熱さを皮膚に同時に与えると「サーマルグリル錯覚」という痛覚刺激に結びつく。そこで‘ひっかき’を再現でき、皮膚を傷つけず‘かゆみがかゆみを呼ぶ’という現象が起こりにくくなる。

また、視覚障害者の方が持つ白杖に実装することで、杖先の温度を手のひらに伝えることができるなど、様々なヘルステックへの貢献が考えられる。

 

②FOOD Tech(食分野)

フォーク・スプーン等のカトラリー・食器に実装することで、口元の感触の向上や食材の最適温度維持につながる。

 

③XR Tech(仮想社会)

ヘッドセットの耳元に実装すれば仮想空間の気温を再現でき、手元に実装すれば仮想現実空間で物を掴んだシーンなどでの感触を高めることができる。

 

このイノベーションを携えて、国内だけでなくグローバル市場への進出も目指している。

温冷の感覚を同時に与えて痛覚刺激を与える「サーマルグリル錯覚」でかゆみに対する適切な対処に貢献を図る

 

【スタートアップエコシステム沖縄との出会い】

吉國さんは、大阪ヒートテックの役員で、資金調達などの経営面にも携わる。大阪公立大学で起業支援室でベンチャー支援にも関わっている。

 

沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)でのアクセラレーションプログラムに採択されたのをきっかけに沖縄に居を移した。日本発のスタートアップ企業としては、同プログラム初の採択となった。

 

「沖縄に来たのとほぼ同じタイミングで『Lagoon KOZA』に足を運び、その繋がりから、沖縄で開催されているピッチイベントである『コーラルピッチ』での登壇に繋がりました」

 

東京・大阪よりも、コミュニティが密な関係である沖縄でのメリットも感じているという。

 

「メンターや投資家の皆さんが県外からも来ていたので、少人数の環境での濃い交流が出来たのが良かった。スタートアップを志している方や、県内の民間企業の皆さんとも繋がれたのは大きかったです。派生して次なる展示会の出展や、良いメンターとの出会いもありました」

 

沖縄のスタートアップ環境の優位性についてもこう話す。

 

「Lagoonでの創業支援では、税務や補助事業などで担当の機関と繋げて頂きました。OISTのアクセラレーションプログラムもそうですが、地銀もベンチャー支援に力を入れていて、沖縄のスタートアップの機運は高く感じます

 

全国のエキスパート・プロフェッショナルの‘知’から構成されるスタートアップが沖縄に結集し、羽ばたこうとしている。

大阪ヒートクールが提案してくれる、「触覚」のイノベーションを心待ちにしたい。

 

役員を務める吉國聖乃さん

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