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沖縄のスタートアップを取り巻く現状②〈発展戦略を分かりやすく解説〉

沖縄のスタートアップを取り巻く現状

3. 沖縄におけるスタートアップ支援

沖縄において、GX・DXなど新たな産業構造への転換や社会課題解決を推進し、持続的な経済成 長を実現するため、スタートアップによる新事業・新産業の創出が期待されています32。また、 2020年には、ベンチャー企業の支援に積極的な大手企業や団体など39社により、スタートアップ との連携を見据えた「沖縄ベンチャーフレンドリー宣言33」が出されるなど、スタートアップなど との連携によるオープンイノベーションは、既存の事業者の高度化も促進するものとしても期待が 高まっています34。
現在、琉球ミライとLink and VisibleによるStartup Lab Lagoon KOZAや沖縄県による Startup Lab Lagoon NAHA、琉球大学によるSTARTUP LAB RYUDAIなど創業・共創・学び・

コミュニティ形成を支援する拠点が各地で整備されていることに加え、国や県による補助金や民間 によるスタートアップに特化したファンドの充実、マッチングイベントの増加、実証・テストベッ ドの整備などにより事業環境が整備されるなど、県市町村や民間によるスタートアップ支援の気運 も高まってきています。また、それらの取組を連携させることで、一体的で効果的な支援を行うス タートアップ・エコシステムを構築するために、2022年12月、「おきなわスタートアップ・エコシ ステム・コンソーシアム」が設立されました。

 

 

1. スタートアップ支援の枠組み
沖縄におけるスタートアップへの支援は、大きく分けて人材育成、資金調達、事業サポート、コミュニティ形成の領域で展開されています。

①人材育成

人材育成は、起業家育成プログラムである「社会起業家育成」「スタートアップ育成」「ア クセラレーションプログラム」と、スタートアップの支援者を養成する「支援者養成」に分 類できます(図25)。 社会起業家育成とスタートアップ育成はどちらも主にスタートアップ予備軍からプレシー ド期までを対象にしており、アントレプレナーシップや起業の基礎を学ぶ内容となっていま す。 アクセラレーションプログラムは、スタートアップの活動を加速させることを目的とする もので、プレシード期からシード期のMVP開発までの実際の起業活動について、時にはハン ズオンでサポートを行いながら、実践に即して学ぶ内容となっています。 全体的に見ると、大学や民間における初期の起業家育成プログラムは比較的豊富で、社会 起業家の育成プログラムも多いことが特徴的です。 また、MVP開発までは、アクセラレーションプログラムによる起業家育成もありますが、 組織構築が重要になっていくアーリー期以降に関する起業家育成プログラムは現在あまりな く35、シード期後期から必要になる経営人材(CFOなどCXOと呼ばれる人材)や即戦力となる 人材の供給を促進する支援が不足しているという状況です。アーリー期以降の起業家育成プ ログラムについては、その需要も確かめながら検討していく必要があります。 一方、既存の事業者の第二創業やオープンイノベーションの促進に向けた育成プログラム はあまりなく、今後、検討していく必要があります。 支援者養成には、スタートアップに出資・融資を行う際の判断能力の向上を目指した、金 融機関向けの「目利き力向上事業/内閣府」はありますが、行政や支援機関のスタートアッ プを支援する人材の高度化を目指した養成プログラムが必要です。

 

②資金調達

資金調達に関する支援は、「補助金」「出資」「借入(デットファイナンス)」「投資マッ チング」に分類できます(図26)。

補助金については、国や県および大学関連組織などによる起業活動の経費の一部を補助す る支援が、スタートアップ予備軍からアーリー期に至るまで広くカバーしています。 出資については、沖縄振興開発金融公庫や民間のファンドが、主にシード期後半からアー リー期をカバーしています。 借入については、銀行等からの一般的な借入やスタートアップ創出促進保証制度36、ベンチャーデット債務保証制度37などにより、主にシード期後半からミドル期がカバーされていますが、その他にも、ベンチャーデット38や資本性ローン39などスタートアップを対象とする 借入があります。 投資マッチングについては、県および民間によるプレシード期からアーリー期を対象とし たマッチングイベントがあります。 全体的に、プレシード期からアーリー期にかけて補助金および出資による支援が厚くなっ ていますが、調達規模が大きくなるミドル期以降の支援が薄いという状況です。また、プロ ダクトもなく先行きがはっきりとしないために金融機関からの資金供給が難しいプレシード 期とシード期初期については、補助金による支援があるものの、エンジェル投資家などによ る支援は薄いという状況です。

 

 

 

③事業サポート

事業活動に関する支援は、スタートアップのプロダクト開発において技術面から支援を行 う「プロダクト開発」、市場開拓などを支援する「マッチング支援」、プロダクト開発にお けるPoC・実証実験を支援する「実証・テストベッド」、スタートアップと既存の事業者と の連携を支援する「オープンイノベーション」に分類できます(図27)。 プロダクト開発の支援については、スタートアップ予備軍からアーリー期においてビジネ スモデル検証やプロダクト開発の手段の調達に関する支援があります。 マッチング支援については、プロダクト開発(プロトタイプ開発を含む)が始まるシード 期からレイター期までカバーしていますが、初期顧客の獲得が重要となるシード期後半から アーリー期における支援が厚くなっています。 実証・テストベッドに関する支援の取組としては、市町村・地元関係者・実証実験の場の 管理者などとの調整や、規制緩和に関する相談に対応する沖縄実証実験支援プラットフォー ムの運用が開始されています。 オープンイノベーションの支援については、シード期後半からミドル期までカバーしていま すが、支援数が少なく手薄な状況です。

 

④コミュニティ形成

スタートアップ・コミュニティの形成に関する支援は、コミュニティ形成の核となる「拠 点」「イベント」「情報発信」に分類できます(図28)。 相談やプログラムの提供などにより人を集めてつなぐ、コミュニティの核となる拠点につ

いては、コワーキングスペースから創業・人材育成・共創を支援する総合的な拠点までいく つかのタイプがあり、全体ではスタートアップ予備軍からミドル期まで産学官による支援が 厚く提供されています。なお、各拠点は、WEBやチャット、SNSを活用し、スタートアップ予 備軍からレイター期までを対象に情報発信を行っています。 情報発信・収集、交流、マッチングなどによりネットワーキングや次の事業展開のきっか けを提供するイベントについては、スタートアップ予備軍からレイター期まで、幅広くカ バーしている状況です。

2. スタートアップ支援の課題

本項では、「人材育成」「資金」「事業サポート」「エコシステム強化(コミュニティ形成を 含む)」という観点から、スタートアップを支援する側の課題をまとめます。 本戦略では、これらの課題を踏まえた支援の取組が必要となります。

①人材育成に関する課題

スタートアップの創出促進には、スタートアップ(第二創業を含む)に挑戦する人材が不 足しており、アントレプレナーシップやスタートアップの意義・取り組み方などについて既 存の事業者も含めて広く学ぶ機会を提供し、スタートアップのすそ野を広げていく必要があ ります。既にスタートアップに挑戦している人に対しては、アーリー期以降に関する起業家 育成プログラムが不足していますが、アーリー期以降を対象とするプログラムの提供につい ては、その需要も確かめながら検討していく必要があります。 また、CFOなどCXOと総称される経営人材や高い専門性を持つ人材、バックオフィスなどで 即戦力となる人材が不足しており、これらの人材にスタートアップに触れる機会を提供し、 興味・関心を引き起こさせることが重要です。これらの取組は、既存の事業者の第二創業や スタートアップとのオープンイノベーションための人材育成に対しても有効です。

 

スタートアップを支援する人材(メンターや行政・支援機関の人材、出資や融資を判断す る金融機関の人材など)についても増やす必要がありますが、これらの人材を育成・確保す る仕組みが十分でなく、今後、整備していく必要があります。 国内・海外からのスタートアップ人材の誘致については、取組が不足しているため積極的 に推進する必要があります。

<主な課題> (ア)スタートアップや新事業(第二創業を含む)に挑戦する人材が不足している。 (イ)スタートアップに参加する人材(経営人材や高い専門性を持つ人材、バックオフィスなどで即戦力となる人材)が不足している。 (ウ)スタートアップを支援する人材(メンターや行政・支援機関の人材、投資や出資を判断する金融機関の人材など)を育成・確保する仕組みが整備されていない。 (エ)国内・海外のスタートアップ人材の誘致に関する取組が不足している。

 

②資金に関する課題

スタートアップの創業者には、どのように資金調達すればよいのかわからない人もいるた め、IPOやM&Aなどの出口戦略を見据えた資本政策や資金調達の仕組みについて学ぶ機会を提供する必要があります。 スタートアップを増やしていくためにも、資金供給の量と方法を拡充していく必要があり ますが、沖縄では、プロダクトの販売前の支援を行うエンジェル投資家やミドル期以降の大 型資金を供給するベンチャーキャピタルなどが不足しており、切れ目のない資金供給が地域 で完結しておらず、これらを補う支援が必要です。また、金融機関において、スタートアップ のビジネスモデル等を評価できる人材が求められており、目利き力(投資対象となるスター トアップを見極める力)を持つ人材の育成など、金融機関における支援体制を強化する必要 があります。

<主な課題>
(ア)資金調達について学ぶ機会の提供とその周知が十分でない。
(イ)資金供給の量と方法が不足している。
(ウ)切れ目のない資金供給が地域で完結していない。
(エ)スタートアップへの投資判断を行える人材が不足している。

 

 

③事業サポートに関する課題

スタートアップは、日々、経営(ビジネスモデルや経営戦略を含む)、市場調査、契約な どの法務、資本政策、事業拡大に向けた組織づくりなど、専門性の高い事柄について課題を 抱えており、これらの課題解決を支援するために、専門家へ相談できる機会を提供するな ど、専門的な疑問や課題の解決を支援する体制を整備する必要があります。 プロダクト開発のための技術が不足しているスタートアップに対する技術的支援が薄い状 況ですが、今後は、プロダクト開発の技術的な支援を強化する必要があります。また、プロ ダクト開発における実証実験の体制が強化されましたが、これを活用してもらうため、その 周知を十分行うことが重要です。 スタートアップの知名度や信用力の低さが販路拡大などの事業展開の障壁になることがあ り、スタートアップの知名度・信用力の向上や事業展開の支援を充実させることが重要で す。 スタートアップの資金が足りない時期において、働く場所などビジネスに必要なリソース の確保に関する支援を充実させる必要があります。 スタートアップの成長や事業展開の加速と地域の既存の事業者の高度化を両立させるオープンイノベーションの認知度は低く、オープンイノベーションが生まれる機会がそもそも少ないという現状を変えるため、オープンイノベーションを啓蒙し、促進するための取組を増や す必要があります。

<主な課題>
(ア)支援の周知が十分でない。
(イ)専門的な疑問や課題の解決を支援する体制が十分でない。
(ウ)プロダクト開発の技術的支援が薄い。
(エ)実証実験の支援体制が不十分。
(オ)スタートアップの認知度・知名度・信用力向上や販路拡大など事業展開に関する支援

が弱い。
(カ)ビジネスに必要なリソースの調達を支援する取組が不十分。 (キ)オープンイノベーションの認知度が低く、スタートアップと地域の企業との連携を促進する取組も十分ではない。

④コミュニティ形成に関する課題

県内のスタートアップ・コミュニティに参加していないステークホルダーも多く、情報収 集や仲間づくりのためのコミュニティの形成が不十分であることから、コミュニティ参加の 案内を強化したり、イベントを通してコミュニティ内の活動を活性化したりすることでコ ミュニティの強化を図る必要があります。また、人材・資金・情報が循環するようなエコシ ステム形成を目指し、先輩起業家と交流する機会を増やすなど、エコシステムから輩出された人材がエコシステムに関与しやすくなる取組を推進する必要があります。
おきなわスタートアップ・エコシステム・コンソーシアムが発足し、メンバーが連携する ための体制が構築されましたが、個々のイベントの日程が個別に設定されるなど、エコシス テムとして一体的で効果的な取組の推進に課題があり、情報の共有や連携を強化する必要が あります。 エコシステムをより充実させるためには、スタートアップ、学生や研究者などのスタート アップ予備軍、支援側の現状・ニーズ・課題を把握する必要がありますが、それらの情報を 収集する仕組みを整備する必要があります。 スタートアップが持続的に創出される、挑戦しやすい環境を形成するためには、スタート アップ予備軍や地域に向けて、スタートアップの意義や成果に関する情報発信を十分に行 い、スタートアップ予備軍への啓蒙と、スタートアップへの挑戦を理解し応援する文化を醸成することが重要です。

 

現在、国内・海外のスタートアップ・エコシステムとのネットワークが弱く、互いのスター トアップの事業展開をサポートする連携が不十分で、現地における事業展開のサポートが限 られているという課題がありますが、県内スタートアップが現地のスタートアップ・エコシ ステムからサポートを得られるよう、国内・海外のスタートアップ・エコシステムとの連携 を強化する必要があります。

 

〈主な課題〉

(ア)情報収集や仲間づくりのためのコミュニティの形成が弱い。出会う機会の提供が少な い。

(イ)先輩起業家との交流など、エコシステムが輩出した人材がエコシステムに関与しやす い仕組みの構築が弱い。

(ウ)おきなわスタートアップ・エコシステムのメンバー間の情報共有や連携が弱い。
(エ)おきなわスタートアップ・エコシステムのステークホルダーの状況が十分に把握でき

ていない。
(オ)スタートアップへの理解を深め、スタートアップに挑戦する文化を醸成するための県

民や地域への情報発信が不十分。
(カ)国内・海外とのスタートアップ・エコシステムとのネットワークが弱く、互いのスター
トアップの事業展開をサポートする連携が不十分で、県外における事業展開のサポートが限られている。

公式SNS及びこちらのウェブサイトでは、発展戦略を項目別に分け、みなさまにお届けしていきます。

発展戦略はこちらからご覧いただけます▶︎https://startup-lagoon.okinawa/cms/wp-content/uploads/2024/01/おきなわスタートアップ_エコシステム_発展戦略R05.12.pdf

 

なお、加盟に関する問い合わせや創業相談も受け付けております。 ホームページよりお気軽にお問い合わせください。 ご予約をとっていただけたらより細かな対応が可能です。

お問い合わせ→こちらのページからチェック

 

【Lagoon NAHA】

場 所 : 沖縄県那覇市松山2-2-13 長谷工那覇ビル1F

メール:okst-info@okinawa-startup.jp

電話:090-9855-6044

開館日及び時間:平日 11:00~18:00

閉館日:土日、祝日、年末年始(12/29~1/3) 但し、イベント開催日は除く

 

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