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水産物の養殖飼料を魚由来から藻に。安定供給を実現する未来へ 「AlgaleX社」 高田大地氏
豊富な水資源に囲まれている日本。未来永劫、当たり前のように海産物を食べ続けられると思っている人が大半なのではなかろうか。
しかし現代では、天然魚は海産物の需要上昇による乱獲や気候変動などの要因が重なって日本の漁獲高は減少。
かく言う養殖魚に至っては、飼料が魚由来のため「魚を生産するために魚を消費」しているという状況で、以前として世界のタンパク質危機は継続する一方である。
そこで現れた救世主が、沖縄県うるま市に本社を構えるAlgaleX社の、藻由来の水産飼料を作り出す技術。
代表の高田大地さんに、商品の意義と開発過程について伺った。
AlgaleX社 高田大地代表
【減少する国内漁獲高。養殖業に期待が向けられるも】
世界的に魚の需要が高まっている。
農林水産省の統計によると、1988年の世界全体の漁獲高は約1億t、2023年は約2億tと、直近35年間で2倍に推移している。
しかし、日本に絞って言うと、1988年の約1200万tに対し、2023年は約400万tと、1/3にまで落ち込んでいる。
和食ブームなどで魚の需要が底上げされた他、日本に回遊する前に海域で外国船による乱獲、気候変動が主たる原因であると言える。
天然モノの海産物が獲れないとなると、期待されるのは養殖業であるが、海洋漁獲高と養殖漁業の活況は奇しくも比例してしまう。
「現在の一般的な養殖魚の飼料は、魚粉や魚油が由来になっています。現在の世界的な魚の争奪戦の最中に『魚を生産するために魚を消費する』という事態になっているんです。例えば、クロマグロ1kg増やすために、アジやサバといった大衆魚が10Kgも消費されるんです」
こうした状況に伴い魚粉の価格も高騰し、養殖事業者の経営を圧迫している。
【魚に魚を食べさせない養殖を】
魚の栄養源は「DHA」と「タンパク質」である。前述のとおり、魚は魚を捕食することでその栄養素を補っている。
これまでは生態系が海の中で循環していたが、水産物減少のサイクルを止めるには、魚以外のDHA供給源を模索しなければならない。
「水産物の供給を維持するために、弊社ではDHAとタンパク質を含む飼料を、植物由来である『藻』で用いて作り出すことに成功しました。
泡盛粕に含まれるアミノ酸を一次栄養源にして、DHAを豊富に含む藻をタンクで培養・生産。これを飼料として魚の養殖を行います」
疑問が浮かんだ。タンクの中で培養されると言うが、藻は植物である。光合成に必要な光はどうするのか。
「光合成を必要としない種類の藻があるんです。また通常は、外的コンディションによって成分組成に変化が出るものなのですが、弊社が持っているコア技術は、培養工程を自動制御して、泡盛粕以外のお酒やお茶・豆からも均質なクオリティの藻が培養可能であるという点です」
【人が食べても美味い!「Umamo」】
この新素材のDHA含有藻は、ダシやサプリとして「Umamo(ウマモ)」という名称で商品化された。
魚の総量を減らさない植物性で、青魚の10倍のDHAを含んでいる。
「魚介の風味というものは、実はDHA由来なんです。それに加えてUmamoは各種旨味成分を豊富に含むため、魚介の風味と濃厚なコクを楽しめます。そして藻由来の健康成分であるDHAやGABA、各種アミノ酸が同時に摂取できる稀有な旨味と健康を兼ね備えた食材です。
また、植物由来のため、ヴィーガンやベジタリアン志向の人もライフスタイルを尊重しながら、味のバリエーションが楽しめます」
Umamoを使ったメニューを提供している、うるま市の「ヘルシービストロりゅうさんち」の加藤龍如オーナーシェフは、
「旨味があってパンチも強いので、いろんな種類の料理と組み合わせられます。またヴィーガンリクエストのお客さまに提供するにあたり、味わいもリッチに仕上がる。ダシは温度管理や水の硬度など繊細な作業が必要なのですが、Umamoは使いやすいので飲食店のオペレーションでも助けられています」
魚介の味わいが肝となるバーニャカウダ。
植物由来のUmamoでしっかりとした魚介の味わいが再現できている。
【沖縄で創業した意味は】
本社があるうるま市の『沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター』の中に、微生物を扱う上で非常に整ったパイロットプラントが在ったからです。
また様々な未利用資源から藻を培養したのですが、泡盛粕から生まれたものが最も味わいが良く品質が高かった。
これは沖縄という土地に泡盛がある文化のおかげですし、沖縄で事業を展開させないと出来ませんでした。この巡り合わせに感謝しています。
AlgaleXのミッションは「健康を、海とからだに」
現在、サプリ商品が発売されている。そしてUmamoのもつ魚介のコクを生かした、Umamoだし醤油とUmamoバーニャソースを近日発売予定。現在先行予約を受付中だ。
Umamoネットショップ
https://umamo.jp/shop
2025年には全自動培養技術を確立させて、水産飼料の大量生産を進められるよう、ロードマップの歩みを進めている。
水産物の安定供給をもたらす未来のために…
AlgaleXの技術が、持続可能な海産物の恵みを私たちに与えてくれようとしている。